Listening Points
Neo Soulの聴きどころ
ネオソウルは、歌ものとして聴いても、演奏やビートの質感として聴いても楽しめるジャンルです。まずは現行感の強い作品から入り、AOR寄り、ジャズヒップホップ寄りへ広げると流れが掴みやすくなります。
Album List
Neo Soul名盤一覧
Dinner Party、NxWorries、Hiatus Kaiyote、Silk Sonic、Tom Mischなど、現行ネオソウルの入口から周辺ジャンルまでつながる作品をまとめています。
enigmatic society
最近のネオソウル周辺をつかむなら、ここから入るのはかなりアリです。ジャズ色は強いのに、構えず聴けるのがこの作品の良さ。 『Enigmatic Society』は、カマシ・ワシントン、テラス・マーティン、ロバート・グラスパー、9th Wonderが関わるDinner Partyの2023年作。ジャズ、ヒップホップ、R&Bの境目をなめらかにつないだ内容で、ネオソウルを「歌もの」だけでなく質感や空気感で捉えたい人にも向いています。 「Insane」のゆるくmellowな感触、「For Granted」のタイトなサンプリング感覚、「Answered Prayer」の洒落た鍵盤の響きあたりはかなり象徴的です。プレイ自体は派手に前へ出過ぎないのに、各パートの音色が絶妙で、気づくと何度も聴き返したくなる。現行のネオソウルやジャズヒップホップの更新形としても、まず押さえておきたい一枚だと思います。
Free Nationals
生音の気持ちよさで選ぶなら、このアルバムはかなり強いです。肩の力が抜けているのに、演奏の密度はしっかり高い。 2019年発表のこの作品は、生音ベースのサウンドをじっくり堪能できる一枚。ソウル、ファンク、ジャズ、ヒップホップが自然に混ざり合っていて、70年代的な太いグルーヴを持ちながら、音像はかなり現代的です。 アンダーソン・パークの存在感はもちろんですが、Free Nationalsの演奏隊がとにかく良い。オーガニックでファンキー、それでいて押しつけがましくないので、R&Bやchill outが好きな方にも入りやすいはず。ネオソウルを「歌とバンド感」で楽しみたいなら、今でもかなり有力な入口です。
yes lawd!
ビート感が好きなら、この作品は外せません。ネオソウルとヒップホップの境目が気持ちよく溶けたタイプです。 KnxwledgeとAnderson .PaakによるユニットNxWorriesの2016年作。サンプリング感覚を強く残しながら、メロディアスでオーガニックな質感もあるのがこのアルバムの面白いところです。J DillaやMadlib以降のビート感が好きな人なら、かなりしっくり来るはず。 「Yes Lawd!」自体が今でも十分に名盤ですが、2024年には続編『Why Lawd?』も出て、2025年2月2日の第67回グラミー賞ではBest Progressive R&B Albumを受賞しました。だからこそ、まずはこの一作目に戻ると、二人の原点がよく見えます。最先端のネオソウル名盤として、いま聴いてもまったく古びません。
choose your weapon
ちょっと変拍子っぽい揺れや、緻密なのに自然体な演奏が好きならかなりハマります。最初は不思議でも、慣れると抜け出せないタイプ。 Hiatus Kaiyoteはメルボルン出身のユニットで、現代ネオソウルを語るうえで外せない存在です。『Choose Your Weapon』では、生楽器と電子的な処理が複雑に絡みながら、グルーヴそのものはしっかり人力の体温を残しています。 チルアウト寄りの空気感もあれば、ジャズ、ソウル、ファンク、ヒップホップ由来の感覚も濃い。2024年6月28日には新作『Love Heart Cheat Code』もリリースされていて、いまも更新が止まっていないのがこのバンドのすごいところです。そのうえで、この『Choose Your Weapon』は代表作としてやはり強い。ネオソウルの自由さを知るなら、かなり良い一枚です。
It Is What It Is
ベースの存在感からネオソウルに入りたいなら、この作品はかなりおすすめです。技巧は凄いのに、ちゃんとポップに着地しているのがいい。 サンダーキャット(Thundercat) 『It Is What It Is』 サンダーキャットはロサンゼルス出身のベーシスト/ボーカリスト/プロデューサー。超絶技巧の印象が先に来がちですが、このアルバムではユーモア、喪失感、ファンクネスがうまく同居していて、ネオソウルとしてもかなり魅力的です。 「Dragonball Durag」の軽やかなファンク感は入りやすいですし、全体を通すとオーガニックさとアナログ感も強い。2021年3月14日にはこの作品がグラミーのBest Progressive R&B Albumを受賞していて、評価面でもひとつ抜けた存在です。ブレインフィーダー周辺の空気が好きなら、Blue Note産のジャズファンク特集あたりと繋げて聴くのもかなり面白いと思います。
An Evening with Silk Sonic
王道寄りで気持ちよく聴きたいなら、やはりこの一枚です。ネオソウルの中でも、甘さと華やかさが前に出ています。 Bruno MarsとAnderson .PaakによるユニットSilk Sonicのファーストアルバム。70年代クラシックソウルのフィーリングをかなり丁寧に現代へ持ち込んだ作品で、ネオソウルという括りでも相当聴きやすい部類です。 「Leave The Door Open」はスウィートソウルとしての完成度がとても高く、2022年のグラミーでも主要部門を獲得しました。サンダーキャットやBootsy Collinsらの参加も含め、演奏陣の説得力も強い。最近のネオソウルをもう少し甘めの方向で探したい人には、かなり相性の良い一枚だと思います。
GEOGRAPHY
ギターの心地よさで選ぶなら、Tom Mischはかなり入りやすいです。ネオソウルというより、そこに繋がる都会的な感触を気持ちよく味わえるタイプ。 Tom Misch Geography 2018年発表のTom Mischによる作品で、YouTubeやDTM世代の感覚を持ちながら、生楽器の気持ちよさもしっかりある一枚。メロディアスなギターを中心に、ソウル、ファンク、ジャズ、ヒップホップが軽やかに混ざっています。 「Lost In Paris」や「It Runs Through Me」のような都会的でリラックスした曲は、ネオソウルを少しポップ寄りに楽しみたい人にちょうどいい。山下達郎以降の都会感やAOR寄りの耳を持っているなら、シティ・ポップ特集とも自然に繋がるはず。肩肘張らずに聴けるけれど、ちゃんと音楽的に美味しい作品です。
Common, Robert Glasper and Karriem Riggins
ジャズヒップホップ寄りの落ち着いた空気が好きなら、この作品はかなり刺さります。派手さより、じわっと深いタイプです。 ロバート・グラスパー、カリーム・リギンス、Commonの3人によって作られたプロジェクト。ジャズ、ヒップホップ、ソウルの距離感が近く、派手なフックで引っ張るというより、演奏とラップの重なりでじっくり聴かせるタイプのアルバムです。 ヒップホップを軸にしながらも、オーガニックで洗練されたネオソウルの感触がしっかりあります。ロバート・グラスパー周辺が好きな人はもちろん、社会性のあるリリックと落ち着いたグルーヴを両方求める人にもおすすめ。説明不要と言いたくなるくらい、3者の持ち味が噛み合っています。
black radio recovered
ロバート・グラスパー周辺をもう少し掘りたい人にちょうどいい一枚です。ネオソウルとヒップホップの接点が、かなり見えやすい。 ロバート・グラスパーによる『Black Radio』周辺の熱量を、リミックスを通してもう一段深く味わえる一枚。9th Wonder、Pete Rock、Mos Def、Erykah Badu、Questloveら、ブラックミュージックの重要人物が交差する内容で、文脈ごと楽しめます。 生音ベースのオーガニックな質感はそのままに、ソウルフルでジャジー、それでいてヒップホップの芯もある。J Dillaへの愛がにじむ構成も含めて、2000年代以降のブラックミュージックの広がりがよく見える作品です。ネオソウルを一点突破で聴くというより、周辺文化ごと味わいたい人に向いています。
Canyons
ここから少しAOR寄りに寄せたい人向けです。ネオソウルの中でも、都会的で滑らかなメロウ感が強いタイプ。 DTM中心の音楽が多い今でも、ここまで70年代・80年代フィーリングをオーセンティックに鳴らせるのかと驚かされる一枚。2020年発表の作品で、AORやクラシックな70’sソウルが好きな方にはかなりおすすめです。 Bobby Caldwell直系のスウィートさと、生音ベースのメロディ、タイトすぎないミディアムなグルーヴが魅力。「KIDS」のような曲は特にわかりやすく、ソウル、ファンク、ポップス、city pop好きまで広く刺さるはず。ネオソウルの中でも、少しAORやシティソウル側から入りたい人にぴったりです。
WEST END COAST
Young Gun Silver Foxをもう少し掘るなら、この1stは外せません。AOR好きにはかなり気持ちいい内容です。 2015年発表の1stアルバムで、「You Can Feel It」を含む代表作。ロック、ポップス、AOR、ソウル、ファンクがバランスよく混ざり、カリフォルニアのwest coast感をしっかり感じられます。音の作りも丁寧で、生音重視のサウンドプロダクションがとても心地いい。 日本で言えば、山下達郎周辺のグルーヴ感が好きな方にも近い感触があると思います。レイドバックした空気を持ちながら、古い懐古だけで終わらないのがこのデュオの強さ。ネオソウルを少し広く捉えて、AORやシティソウルまで含めて楽しみたい人には特におすすめです。
Whatcha Gonna Do For Me?
最後はシングルで軽く締めたい人向けです。アルバム単位で入る前に、この空気感だけつまみたいときにちょうどいい。 Donald Byrd『Places and Spaces』を思わせるようなジャケットも楽しい、2020年発表のシングル作品。ソウル、ダンスクラシック、ポップス、ファンク、AORが好きな方ならかなり気持ちよく聴ける軽快なナンバーです。 Young Gun Silver Foxのナチュラルなバイブス、洗練されたメロディーライン、都会的なAOR感がコンパクトに詰まっています。全作品で大きく外さない安定感もこのデュオの魅力。ネオソウルを広義のグルーヴ・ミュージックとして楽しみたい人には、こういうシングルもかなり効きます。
First Listen
まず1枚だけ試すなら
現行ネオソウルの温度感をまず掴むなら、Dinner Party、Hiatus Kaiyote、Thundercat、Free NationalsあたりをYouTubeで軽く試すのが入りやすいです。購入前の試聴導線として、ここではYouTubeリンクだけをまとめます。
Dinner Party「Answered Prayer」をYouTubeで試聴する
Hiatus Kaiyote「Fingerprints」をYouTubeで試聴する
Thundercat「Dragonball Durag」をYouTubeで試聴する
Free NationalsをYouTubeで試聴する
Summary
まとめ
ネオソウルは、ひとことで括れそうでいて実際はかなり幅があります。ジャズ寄りならDinner PartyやRobert Glasper周辺、ビート寄りならNxWorries、王道の甘さならSilk Sonic、AORやシティポップとの接続を感じたいならYoung Gun Silver FoxやTom Mischあたりが入りやすいはず。条件で言えば、落ち着いて聴けるブラックミュージックを探している人、あるいは制作目線でコード感やグルーヴを楽しみたい人には特に向いています。 今回の12作はどれも、ネオソウルを「何となくお洒落な音楽」で終わらせず、ちゃんと違いを楽しめる作品ばかりです。まずは気になった1枚を選んで、そのあと近い温度感の作品へ広げていくと入りやすいと思います。
Related Topics
Neo Soulから広げるオーガニックな音楽
R&Bの年代、生演奏のアーティスト、HipHopバンドへ進めます。
Related Flow
あわせて読みたい
この記事に興味のある人へ向けた近い記事をまとめます。












Blue note(ブルーノート)産 ジャズファンク 洋楽・名盤特集
究極のMellow Groove・スウィートソウル特集|70〜80年代の隠れた名盤たちパート2
オススメ MOTOWN(モータウン) 洋楽 名盤 特集pt.1