前回に続き、今回は“Lost & Found”と呼ぶにふさわしい、70〜80年代の隠れたmellow groove/スウィートソウルの名曲たちを厳選してご紹介します。ジョージ・ベンソンからThe O’Jaysまで、メルカリや中古レコードショップで思わず手に取りたくなるレア盤ばかり。夜のリラックスタイムやドライブ、ちょっとしたブレイクタイムにぴったりな極上のメロウチューンで構成しました。埋もれた宝石のようなソウルナンバーを聴きながら、甘くてゆるい心地よい世界に浸ってみてください。
- George Benson – “Face It Boy, It’s Over” (1969)
- Phoebe Snow – “Second Childhood” (1976)
- Otis Clay – “If I Could Open Up My Heart” (from The Only Way Is Up, 1982)
- Eddie Kendricks – “Part of Me” (from He Is a Friend, 1976)
- The Manhattans – “Just One Moment Away” (from Black Tie, 1981)
- Leroy Hutson – “The Different” (1975)
- Enchantment – “Sunshine” (1977)
- Bobby Caldwell – “My Flame” (from Bobby Caldwell, 1978)
- The Dramatics – “Makin’ You So Happy” (1977)
- The Delfonics – “La-La (Means I Love You)” (1968)
- The O’Jays – “Who Am I” (from Backstabbers, 1972)
- The Jones Girls – “Who Can I Run To” (from Info, 1979)
- The Miracles – “I Wanna Be With You” (from Renaissance, 1972)
- まとめ:忘れられた名曲たちと、ソウルの深みを再発見する
- 究極のMellow Groove・スウィートソウル特集の楽曲を聞く
George Benson – “Face It Boy, It’s Over” (1969)
![Shape Of Things To Come [Analog]](https://m.media-amazon.com/images/I/41tlnhgh-AL._SL800_.jpg)
ジャズ・ギターの巨匠ジョージ・ベンソンが1969年にリリースしたこの「Face It Boy, It’s Over」は、まさにmellow grooveの金字塔。Shape Of Things To Comeのアルバムの収録曲で、CTIレーベルらしい洗練されたアレンジに、ギターが奏でる繊細なメロディが重なり合い、聴く者を一瞬にして別世界へと誘います。リードヴォーカルの甘さとバックのホーンセクションが織り成すグルーヴは、場所を選ばずに馴染む心地よさがあり、1969年という時代を感じさせない普遍的な輝きを放っています。1994年にはヒップホップの巨匠ピート・ロックがプロデュースしたTHE MAIN INGREDIENTのアルバムでもサンプリングされ、ブラックミュージックの歴史に金字塔を打ち立てた伝説の一曲です。
Phoebe Snow – “Second Childhood” (1976)

1976年リリースのアルバム『Second Childhood』からの1曲「CASH IN」は、ロバータフラックとも比較されるファーストレディ、Phoebe Snowによる隠れたメロウソウルの名作。冒頭から胸に染み入るベースラインと、ジャジーなピアノリフが印象的で、聴くたびに新たな発見がある深いサウンドスケープが広がります。クールなソウルヴォーカルと抑制されたホーンセクションが共鳴しており、まさに夜のドライビングやリラックスタイムにぴったり。ジェントルな甘さの中にほんのり漂うブラックネスがたまらなく、1970年代のソウルファンにぜひチェックしてほしい珠玉の一曲です。
Otis Clay – “If I Could Open Up My Heart” (from The Only Way Is Up, 1982)

オーティス・クレイのアルバム『The Only Way Is Up』に収録された「If I Could Open Up My Heart」は、1982年当時のAOR〜スムースジャズ的な要素を取り込んだスムースソウルの好例。力強い男性ボーカルながら決してうるさくなく、柔らかなタッチで紡がれるグルーヴとメロウネスが絶妙に調和しています。70年代のフィーリングを感じさせるタイトなビートと、しっかりと心地よく響くバックトラックが特徴的。ボビー・コールドウェルなどAORリスナーにも刺さる一曲で、ソウルミュージック愛好家にはぜひ聴いてほしい珠玉のナンバーです。
Eddie Kendricks – “Part of Me” (from He Is a Friend, 1976)
![He's A Friend [LP]](https://m.media-amazon.com/images/I/51soqixIhoL._SL800_.jpg)
モータウンに君臨したテンプテーションズのリードシンガー、エディ・ケンドリックスが1976年にリリースしたアルバム『He Is a Friend』から「Part of Me」は、イントロのストリングスとピアノループがスピリチュアルな空気感を醸し出す隠れたメロウソウルの名曲。透き通るようなケンドリックスのハイトーンボーカルが、まるで天使のささやきのように耳に届き、心をひときわ温かく包み込みます。シンプルに流れるメロウネスが終始続き、1970年代半ばのモータウンソウルを代表する名曲として、人々の記憶に深く刻まれています。まさに“隠れた名曲”と呼ぶにふさわしい一曲です。
The Manhattans – “Just One Moment Away” (from Black Tie, 1981)

1981年にリリースされたThe Manhattansのアルバム『Black Tie』収録曲「Just One Moment Away」は、まさに80年代ミディアムメロウの代表格。AORに近いリズムと、しっとりとしたベースラインが心地よく流れ、聴く者を心地よい空間へと誘います。全体のバランスが抜群で、ボーカルグループならではのハーモニーがあたたかく耳に残ります。まるでディスコクラブが一段落した夜明け前のような、やわらかい空気感が魅力的。ゆるやかに心を解きほぐすメロウネスは、まさに“夜のひととき”にぴったりの一曲です。
Leroy Hutson – “The Different” (1975)

リロイ・ハットソンが1975年にリリースしたアルバム『Hutson』収録の「The Different」は、まさにフリーソウルファン垂涎の一曲。ダニー・ハサウェイと並び称される彼のプロデュースワークは緻密かつオリジナルで、「The Different」では冒頭からタイトなリズムと美しいストリングスが絡み合い、ソウルミュージックの奥深さを体感させてくれます。メロウなベースラインと洗練されたコード進行が、シンプルながらも深いグルーヴを生み出し、聴き進めるほどに新たな発見があります。ソウルの歴史に燦然と輝く名曲のひとつで、ぜひゆっくりと味わって聴いてほしい一曲です。
Enchantment – “Sunshine” (1977)

デトロイト発のソウルグループ、Enchantmentが1977年にリリースしたアルバム『Enchantment』収録の「Sunshine」は、前回ご紹介した「Gloria」とはまた違った輝きを放つメロウソウル。イントロから胸が高鳴るようなホーンセクションが鳴り響き、サビへ向かって一気に盛り上がる構成が秀逸です。メロウなヴォーカルが甘く響き渡り、聴く者を心地よい陶酔へと誘います。1970年代後半のフィリーフィーリングを色濃く感じさせるグルーヴと、今も色あせない普遍的なメロウネスが魅力で、ソウルコレクターにはぜひマストな一曲です。
Bobby Caldwell – “My Flame” (from Bobby Caldwell, 1978)

1978年リリースのセルフタイトルアルバム『Bobby Caldwell』収録の「My Flame」は、スムースジャズ〜AORファンから絶大な支持を集める名曲。滑らかに流れるピアノのイントロから始まり、ボビー・コールドウェルの官能的かつ透明感のあるヴォーカルが一気に心を掴みます。ジャケットに描かれたベンチに腰かける彼の姿のように、聴く者を穏やかでセンチメンタルな世界へ誘う癒しの一曲です。ノートリアスB.I.G.が「My Flame」をサンプリングしたことで再評価され、今なおR&B/ソウルリスナーの間で語り継がれています。
The Dramatics – “Makin’ You So Happy” (1977)

1977年リリースのアルバム『Shake It Well』からシングルカットされた「Makin’ You So Happy」は、The Dramaticsらしい甘くてソフトなメロウネスがあふれる名曲。軽やかに跳ねるベースラインとポップなリズムが絶妙に絡み合い、心地よいグルーヴを作り出しています。黒人女性グループの華やかさとはまた違った、男性コーラスグループならではの深みと甘さが魅力で、ソウルファンを唸らせる一曲。アルバム全体も同様にスムーズな楽曲が多く、1970年代後期の隠れたソウルの名盤としてぜひチェックしてほしいです。
The Delfonics – “La-La (Means I Love You)” (1968)

フィリーグルーヴレーベルが生んだ伝説的グループ、The Delfonicsが1968年にリリースしたアルバム『La-La (Means I Love You)』のタイトル曲「La-La (Means I Love You)」は、まさにオールディーズながら永遠に色あせないメロウクラシック。イントロからタイトなドラムとスネアの音が空間を切り裂くように響き渡り、伸びのあるセクシーな歌声がその上を舞うように流れてきます。約60年前にリリースされたにもかかわらず、今もなお新鮮に響く奇跡的なソウルチューンで、ソウルミュージックの原点と呼ぶにふさわしい一曲。まだ聴いたことのない方は必ずチェックしてほしい名曲です。
The O’Jays – “Who Am I” (from Backstabbers, 1972)

1972年リリースのアルバム『Backstabbers』に収録された「Who Am I」は、The O’Jaysが放つブラックネス溢れるメロウソウルの名曲。ジェームス・ブラウン直系のグルーヴが感じられるタイトなビートと、オーソドックスながらも空間に染み渡るようなメロウネスが特徴です。ヒップホップアーティストにもサンプリングネタとして多用され、現在もブラックミュージックのサンプリングソースとして語り継がれる一曲。アルバム全体がブラックミュージック史において大きな役割を果たした名盤で、ぜひじっくりと味わってほしいクラシックナンバーです。
The Jones Girls – “Who Can I Run To” (from Info, 1979)

フィラデルフィアインターナショナルレコードから1979年にリリースされたThe Jones Girlsのアルバム『The Jones Girls』収録曲「Who Can I Run To」は、可愛らしく伸びのあるヴォーカルをフィーチャーしたソフトメロウの極北。ケニー・ギャンブル&レオン・ハフがプロデュースし、デクスター・ワンゼルのシンセサイザーやキーボードが緻密に絡み合うことで、隙のない音作りが実現されています。透き通るようなハーモニーが耳に心地よく染み渡り、誰もが共感できる切なく甘い歌詞とメロディが胸を打つ珠玉の一曲です。
The Miracles – “I Wanna Be With You” (from Renaissance, 1972)
![Renaissance [LP]](https://m.media-amazon.com/images/I/51UfUKxwL0L._SL800_.jpg)
モータウン黄金期を支えたプロデューサー、ウィリー・ハッチが手掛けたThe Miraclesの1972年作「I Wanna Be With You」は、オーセンティックなソウルミュージックの粋を集めた名曲。伸びやかなハイノートヴォーカルと、やわらかくも力強いストリングス、そしてタイトに刻まれるリズムが絶妙に絡み合い、聴く者の心を自然と揺さぶります。メロウでソフト、しかし決して甘すぎない奥行きのあるサウンドは、モータウンファンのみならず幅広いソウルリスナーに響くことでしょう。まさに“至高のメロウソウル”と呼ぶにふさわしい一曲です。
まとめ:忘れられた名曲たちと、ソウルの深みを再発見する
今回ご紹介した曲はいずれも、70〜80年代のソウルミュージック黄金期に生まれながら、今なお新鮮に響く名曲ばかりです。名の知れたレジェンドから、知る人ぞ知るアーティストまで、それぞれの楽曲が放つメロウネスと甘さは、時代を超えて心に寄り添ってくれるような力を持っています。中古レコードやメルカリの箱買いなど、思いがけない出会いがきっかけで見つかる音楽の魅力は、現代のストリーミング時代にあっても色褪せることはありません。誰かに語りたくなるような音楽、ふとした瞬間に口ずさんでしまうような旋律、それらの宝物を掘り起こしていく旅は、これからも続きます。ぜひこれらの曲を日常のサウンドトラックに取り入れて、あなた自身の“メロウソウル・アーカイブ”を育てていってください。
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